宮の坂ドライブイン

あった事を書く

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もうあと二週間も日本にいられない(一年間海外留学をします)のに気づいてちょっと焦って、そろそろ荷づめをしようと思いました。持っているスーツケースがたしか52ℓ位のやつで、もっと大きいのを買った方がいいんじゃないか、と父親に再三心配されているんですが、生活用品は日本とほぼ同じものが買えるはずの国ですし、他に持っていきたいものも別段思いつかず、おそらくそれ(52ℓ)で十分なんじゃないかと思っています。

 

数ある所有物の中から、容量という制限のもと、どうしても持っていかなければならないもの、手放したくないものだけを、選別し、優先順位をつけようとする行為は、現在の自分自身を見つめなおす行為につながるんじゃないかと予想していて、だから留学が決まった頃からわくわくしてもいたんですが、結果としてはそうなりませんでした。

具体的にいうと、服と靴(数日は買い物に行けないから)とパソコン(向うで買うのはもったいないから)くらいしか思いつかなかったんです。ただ、その他の物は失ってしまっていい、というわけではなくて、むしろ大事だと思うもの程日本に置いていくつもりでした。

 

ようするにこれは留学なので、当たり前なんですが決められた期間があって、その期間が終われば私はほぼ間違いなく今の生活に帰ってこられるんですよね。つまり、一年後にはまたそれらと触れ合うことができる、それらは(一年離れようとも)変わらず私の所有物である、という前提が私のなかに確固たるものとしてあり、そうした基盤の全てを失ういわゆる旅や巣立ちとは本質が違ったんだと思います、なにかこう、面白くないので、旅に出たいです。